20年後の郷土料理を考えるプロジェクト
取り組み紹介
紀の川市は、平成17年に5町が合併して誕生しました。海に面していない市ですが、北に和泉山脈、南に紀伊山地を控え、これらの間を東西に紀の川が流れています。さらに南部からは貴志川が合流し、水辺環境と調和した街並みが形成されています。また、温暖な気候と川がもたらす肥沃な土壌を最大限に利用し、野菜や果物など多種多様な農作物が生産されています。こうした風土を有する紀の川市では、農作物や川魚などを中心に、四季折々の食材を活かした郷土料理が生まれてきました。
01 紀の川市の「郷土料理」
合併前から郷土料理の伝承に取り組んでいた市民の方が、今回のプロジェクトを知り、刊行物を提供くださいました。ご提供いただいた昭和59年の資料には、「最近の急激な社会の変転の中にあって、おのずから食生活に対する態度も変わり加工食品への比重も高くなっています。(中略)忙しい毎日ではございますが、食膳に出来るだけ手づくりの味をのせましょう。心暖まる手づくりの味で家族の健康を守りましょう。加工食品にも手を加えて暖かい思いやりを食卓にのせましょう。」とありました。
紀の川市が誕生する以前から、地域の食材を活かした料理の考案や伝承に苦心されていたことが伺い知れます。どのレシピも美味しそうなものばかりですので、ぜひご覧ください。
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伝え育てる那賀の味料理集(2005) 那賀まるごとフェアー実行委員会ほか |
手づくりの味(1984) 打田町生活改善友の会 |
02 買ってみる
生活環境が変化するなかで、家庭で作る機会が減ってしまった郷土料理もいくつか存在します。昔、稲作の工程で田を乾かす準備をする際(紀の川市では「ねき堀り」と言います)、たくさんのドジョウが獲れたのだとか。それを家庭に持ち帰り、旬を迎える野菜類を加えたドジョウ汁にして、隣近所や農家仲間に配る習慣もあったようです。やがてドジョウが獲れなくなった現在でも、イワシで代用し、郷土の味を楽しんでおられる家庭もあるようです。
稲刈り前の農作業で、田を乾かす「ねき堀り」という作業があります。昔はこの時にたくさんの どじょうが捕れ、このどじょうと秋野菜を入れたどじょう汁は栄養豊かな食べ物で、たくさん作り 隣近所へ配ったり、材料を持ち寄って仲間数軒がいっしょに作る習慣がありました。
どじょうを使う場合は、鍋に酒を入れ、どじょうを炒りつけて臭みを抜き、野菜を加えて煮まし た。芋のとろみで体が温まる、秋から冬にかけての料理。
今はおつけ(みそ汁の意味)と言って、どじょうの代わりに豚肉や鰯を入れます。伝え育てる那賀の味料理集(2005)どじょう汁
その反面、家庭の味からプロの味として引き継がれている郷土料理もあります。「鮎ずし」や「じゃこずし」は、その一例かもしれません。こうした郷土料理は、現在でも「力寿司(粉河)」や「じゅげむ(桃山)」といった紀の川市内のお店で購入することが可能です。ぜひ一度お買い求めください。
以前は紀ノ川で鮎やじゃこが豊富に捕れ、秋祭りのごちそうとして素焼きした物を甘露煮や、す しのこにしていました。今では天然の鮎やじゃこは貴重品です。
鮎の保存方法として昔は竹串に刺して焼いた鮎を麦わらにさして保存しましたが、現在は生を冷 凍保存、その都度焼きます。
鮎ずしはとってすぐの時は姿ですしにしましたが、干して保存したものを使う時は、煮てからソ ポロにして押しずしにしたようです。伝え育てる那賀の味料理集(2005)鮎ずし
昔は紀ノ川でじゃこが豊富に捕れ、これを素焼きして煮付けたものをすしのこにしました。この すしは夏はすし飯をにぎったまま、秋祭りの頃になるとにぎってすし箱に押し、1 日たって味がな じんだものを食べました。
今はじゃこずしは商品化され、貴志川町、桃山町、岩出町の名産品になっています。伝え育てる那賀の味料理集(2005)じゃこずし
03 作ってみる
和歌山県立貴志川高校では、郷土料理の調理を家庭科の授業に取り入れています。令和4年度から始まったこの取り組みは、地域の食文化を守り、未来へつなぐ意識を体感できる場となっています。きっかけは、紀の川市食育推進会議の三國和美会長から「かきまぶり(ちらし寿司)」の作り方を学んだことでした。
家庭科教諭の髙井真起子先生は、夫婦共働き世帯が増えていることや、料理に割くことができる家庭内での時間が減っている状況を踏まえ、現代の家庭でも調理しやすいようにアレンジを加えて指導されています。「生徒からは『家で母と作った』という声もあり、学びが家庭へ広がっている感じます。」とお話ししてくださったとおり、家庭科部長の江川泰葉さんからは「伝統の味が昔から残っているのはとても良いことだと思います。この味をしっかり受け継いで、次の世代に残していきたいです。」と話してくれました。
04 考えてみる
令和7年8月、市内の小学生とその家族を対象に、新郷土料理の試作会を開催しました。試作したメニューは、「カレーライス」「鶏そぼろ丼」「サラダ」の3品。どのメニューにも、紀の川市産のフルーツや野菜、調味料を使用しました。
食材は本プロジェクトの趣旨に賛同いただいた以下の事業者から協賛として提供いただきました。




(写真)新鮮な食材やおいしそうな調味料がずらり




(写真)みんなで協力して調理スタート!




(写真)包丁やフライパンはそーっと、安全に♪


(写真)おいしそうな料理が完成!みんなで食べるとおいしいね♪
広報紀の川(令和7年11月号)
試作会の様子などは、広報紀の川でも紹介しています。
05 レシピ
このプロジェクトを通して、市民をはじめ多くの方々にご協力いただきました。試作・試食を重ね、20年後の紀の川市に残っていてほしい、という想いを込め完成させたレシピを掲載します。
皆さんも、ご家庭でぜひ一度作ってみてください。
紀の川カレー(桃ver.)
和歌山信愛短期大学の先生が考案してくださいました。玉ねぎやお肉を炒めず、鍋一つで煮込んで作ります。準備や後片付けも簡単で、野菜や果物の栄養や食物繊維がたっぷりです。
紀の川鶏そぼろ丼(桃ver.)
粉河駅前のカフェ「創 -hajime- cafe」で提供されている柿の鶏そぼろ丼レシピをもとに、アレンジしてくれました。柿の時期になると、創 -hajime- cafeでも提供が始まります。
かきまぶり(貴志川高校 ver.)
貴志川高校で令和4年度から始まった取り組みで考案されたレシピです。調味料や具材など、貴志川高校ver.となりますが、各家庭でアレンジをお楽しみください。
紀の川・果実甘そぼろ(柿ver.)
近畿大学生物理工学部の学生団体「食べガク」の学生たちが考案してくださったレシピです。そぼろとしてご飯に乗せても美味しいですが、パスタソースにしたりと様々なアレンジが楽しめます。
※準備中
紀の川カレー(柿ver.)
和歌山信愛短期大学の学生たちが中心となり考案してくださったレシピです。脱渋柿は、加熱しすぎると「渋戻り」が発生します。調理工程の最後に柿を加えることで、渋戻りを抑える工夫を凝らしています。
※準備中
20年後の紀の川市に残るもの
紀の川市は、令和7年11月に合併20周年を迎えます。皆さんと、笑顔で歩んだ20年――。
紀の川市で生まれたたくさんの笑顔を、次の20年につなげるための取り組みの一つとして「郷土料理」に着目しました。
なぜ今、郷土料理?
「郷土料理」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?
和歌山県内に目を向けてみると「茶がゆ」や「金山寺味噌」、「梅干し」など。現代の日常生活にも馴染み深い料理がある反面、家庭ではなかなか作らなくなってしまったものもあります。
一方、「お好み焼き」や「筑前煮」、「ゴーヤチャンプルー」など、特定の地域とひも付きながら、郷土の枠組みを越えて親しまれているものもあります。20年後に大人になる紀の川市の子供たちが、胸を張って「これは紀の川市の郷土料理!」と言えるものを、合併20年を迎えた今、考えたいと思います。
「つくる」ではなく「考える」
元来、郷土料理は「つくられてきた」ものではなく、地域の風土や文化を背景に「生まれてきた」ものだと思います。歴史の異なる5つの町が合併して生まれた紀の川市。
それぞれの地元で親しまれてきた食材や調理法に着目し、全く新たな料理を「つくる」のではなく、紀の川市の郷土料理として20年後にも残る料理は何かを「考える」機会にしたいと思います。

このページに関するお問合せ先
紀の川市 企画部 地域創生課 TEL 0736-77-2511
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